外国人介護人材の指導方法｜定着率を上げるポイントとは
- 介護福祉人財サービス
- 3月24日
- 読了時間: 14分
▶︎1. 介護現場で外国人を指導する重要性
近年、日本の介護業界では人手不足が深刻化しており、その解決策として外国人介護人材の受け入れが進んでいます。しかし、外国人介護職員が日本の介護現場で円滑に働くためには、適切な指導が欠かせません。文化や言語の違いを理解し、効果的な指導を行うことで、外国人介護人材がスムーズに定着し、戦力として活躍できるのです。
1.1 介護業界における外国人人材の現状
日本の介護業界では、慢性的な人手不足が課題となっています。 厚生労働省の発表によると、2025年には約245万人の介護職員が必要とされる一方で、約30万人以上が不足すると予測されています。
この人手不足を補うため、EPA（経済連携協定）・技能実習制度・特定技能制度 などを通じて、多くの外国人が介護業界で活躍し始めています。
外国人介護人材の受け入れは年々増加しており、特に特定技能制度の創設以降、介護現場での外国人労働者の割合が高まっています。しかし、受け入れた後の教育や定着支援が不十分だと、離職率が高くなり、職場に定着しづらい という課題も指摘されています。
1.2 外国人介護職員を受け入れるメリット
外国人介護職員を受け入れることで、以下のようなメリットがあります。
人手不足の解消
介護業界は深刻な人手不足に直面していますが、外国人材の活用により、現場の負担を軽減できます。
職場の活性化
異文化交流が生まれることで、職場内のコミュニケーションが活発になり、新しい価値観を取り入れられます。
利用者の視野が広がる
高齢者施設などでは、外国人職員との交流を通じて利用者の視野が広がり、日常生活に新たな刺激をもたらします。
一方で、外国人介護職員が安心して働ける環境を整えるには、適切な指導とサポートが不可欠です。
1.3 外国人介護人材に指導が必要な理由と課題
外国人介護職員が日本の介護現場でスムーズに働くためには、適切な指導が必要です。 その理由として、以下の3つが挙げられます。
言語の壁がある
介護の仕事では、高齢者との会話や、医療・福祉に関する専門用語の理解が求められます。日本語が十分に話せない外国人職員は、適切な指導を受けないと意思疎通が難しくなります。
介護の文化や考え方が異なる
日本の介護は「利用者の尊厳を守るケア」が重視されます。しかし、母国の介護文化が異なる外国人職員は、日本式の介護の考え方に慣れるまで時間がかかることがあります。
職場環境に適応する必要がある
外国人介護職員にとって、日本の職場のルールや働き方に馴染むことは簡単ではありません。適切な教育がなければ、ミスが増えたり、離職につながる可能性があります。
これらの課題を解決するためには、現場での指導方法を工夫し、文化の違いや言葉の壁を考慮した教育が必要です。
▶︎2. 外国人介護人材の指導方法の基本
外国人介護人材がスムーズに現場へ適応し、長く働けるようにするためには、適切な指導方法が必要です。特に、日本独自の介護文化や働き方を理解してもらうことが重要になります。ここでは、指導の基本となる3つのポイントについて解説します。
2.1 日本の介護現場の特徴を理解してもらう
日本の介護は、利用者の「自立支援」と「尊厳を守るケア」が基本です。 外国人介護人材の中には、母国での介護経験がある人もいますが、日本の介護現場とは考え方や手法が異なることが多いです。そのため、まずは日本の介護の特徴を理解してもらうことが大切です。
日本の介護現場の主な特徴
特徴 | 内容 |
自立支援 | できることは利用者自身にやってもらい、介護者は必要なサポートをする |
尊厳を守るケア | 利用者の意思を尊重し、個別対応を重視する |
チームケア | 介護職員・看護師・リハビリスタッフが連携してケアを行う |
介護記録 | 日々のケアの内容を記録し、職員間で情報共有する |
外国人介護人材には、まずこれらの基本をしっかり教えることが大切です。 研修の際には、映像や実例を使いながら、具体的なイメージを持てるように指導しましょう。
2.2 言葉の壁を乗り越える方法
介護現場では、正確な意思疎通が不可欠です。 しかし、外国人介護人材にとって、日本語でのコミュニケーションは大きなハードルになることがあります。特に、専門用語や利用者との会話の理解が難しい場合が多いです。
言葉の壁を乗り越えるための工夫
やさしい日本語を使う
「トイレに行きますか？」→「お手洗いに行きますか？」（簡単な表現に言い換える）
「移乗します」→「ベッドから車椅子にうつります」（具体的に説明する）
ジェスチャーやイラストを活用する
身振り手振りを交えながら話す
施設内にイラスト付きのマニュアルを設置する
翻訳アプリや電子辞書を活用する
分からない単語はスマホアプリで翻訳して伝える
よく使う介護用語をまとめたリストを作成する
特に、「やさしい日本語」を使うことで、外国人介護人材の理解が深まり、スムーズに業務を覚えてもらえます。 また、定期的に日本語研修を実施し、現場で必要な会話力を養うことも大切です。
2.3 文化・価値観の違いを踏まえた指導
外国人介護人材が働きやすい環境を作るためには、文化や価値観の違いを理解し、配慮することが重要です。
文化の違いによるギャップ
項目 | 日本 | 外国人介護人材の母国 |
仕事の時間感覚 | 時間厳守が基本 | 柔軟な時間感覚の国もある |
敬語の使い方 | 利用者に対して敬語を使う | 友達のように話す文化の国もある |
介護の考え方 | 自立支援が基本 | 家族が全面的に介護を行う国もある |
例えば、「時間に厳しくする」「利用者に敬語を使う」といったルールは、日本独自の文化です。 こうした違いを理解してもらうには、具体例を交えて説明し、業務の中で少しずつ慣れてもらうことが大切です。
文化の違いを踏まえた指導のポイント
一方的にルールを押し付けない
「日本ではこうしなければならない」と決めつけるのではなく、「日本の介護ではこういう考え方が大切」と伝える
相互理解を深める機会を作る
日本人スタッフと外国人介護人材が交流できる場を設ける
文化の違いについて話し合う機会を作る
具体的な例を挙げて説明する
「利用者さんにタメ口で話すと驚かれることがあるよ」など、実際に起こりうるケースを示して指導する
外国人介護人材が「自分の文化を尊重してもらえている」と感じることで、職場に馴染みやすくなり、長く働き続けることができます。
外国人介護人材の指導では、日本の介護の特徴を理解してもらい、言葉の壁を乗り越え、文化の違いに配慮することが重要です。
▶︎3. 実践的な指導のステップとポイント
外国人介護人材が現場でスムーズに業務を覚え、長く働き続けるためには、実践的な指導が不可欠です。特に、OJTとOFF-JTを適切に活用し、分かりやすいマニュアルを整備しながら、日々のコミュニケーションを大切にすることが重要です。ここでは、効果的な指導のステップについて解説します。
3.1 OJTとOFF-JTの活用方法
外国人介護人材の育成には、OJT（オン・ザ・ジョブ・トレーニング）とOFF-JT（職場外研修）をバランスよく組み合わせることが重要です。
OJTとは？
実際の業務を通じて指導を行う方法です。先輩職員がマンツーマンで教えながら、介護スキルを身につけてもらいます。
OJTのメリット
現場の実践を通じて学べる
すぐにフィードバックができる
利用者との接し方を直接学べる
OJTの注意点
言葉の壁があるため、視覚的な説明（ジェスチャーや写真）を交える
一度に多くのことを詰め込まず、段階的に指導する
OFF-JTとは？
職場を離れて座学や研修を受ける指導方法です。介護技術や日本語教育、文化理解の研修を行います。
OFF-JTのメリット
体系的に知識を学べる
日本の介護に必要な専門知識を習得できる
言葉の学習や異文化理解にも役立つ
OFF-JTの注意点
現場での実践に結びつく内容にする
定期的に振り返りの機会を設ける
OJTとOFF-JTを組み合わせることで、外国人介護人材の理解を深め、スムーズに業務へ適応してもらうことができます。
3.2 分かりやすいマニュアル作成のコツ
外国人介護人材が安心して働けるようにするためには、分かりやすいマニュアルの整備が欠かせません。
良いマニュアルのポイント
項目 | 内容 |
シンプルな日本語を使う | 専門用語を避け、短い文章で説明する |
図やイラストを活用する | 文章だけでなく、写真・イラストを入れる |
具体的な手順を示す | 「～してください」ではなく、「①～する ②～する」のように手順を明記する |
多言語対応を考慮する | 日本語が苦手な人向けに英語や母国語の併記を検討する |
例：悪いマニュアルと良いマニュアルの比較
悪い例 | 良い例 |
利用者を移乗させる | ① 利用者に声をかける 「〇〇さん、体を動かしますね」 ② ベッドの高さを調整する ③ 利用者の手を支えながらゆっくり座らせる |
視覚的に理解しやすいマニュアルを作成することで、外国人介護人材が戸惑うことなく業務を覚えやすくなります。
3.3 コミュニケーションの取り方とモチベーション維持
外国人介護人材が安心して働き続けられるかどうかは、日々のコミュニケーションとモチベーション維持にかかっています。
1. 日々のコミュニケーションを大切にする
簡単な日本語で話しかける（「おはよう」「ありがとう」などの基本的な挨拶を徹底する）
相手の意見を尊重する（文化の違いを理解し、意見をしっかり聞く）
定期的に声をかける（困っていることがないかを確認する）
2. モチベーションを維持する工夫
成果を認め、褒める
「〇〇さん、利用者さんが喜んでいたよ！」とポジティブな声かけをする
キャリアアップの機会を提供する
資格取得のサポートや研修を定期的に行う
相談しやすい環境を整える
悩みを共有できる場を作り、安心感を持たせる
外国人介護人材が職場に馴染み、やりがいを持って働ける環境を作ることが、長期的な定着につながります。
外国人介護人材の指導では、OJTとOFF-JTを適切に活用し、分かりやすいマニュアルを整備し、日々のコミュニケーションを大切にすることが重要です。
▶︎4. 外国人介護人材の定着を促すフォローアップ方法
外国人介護人材が長く働き続けるためには、指導だけでなく「フォローアップ」が欠かせません。 文化や言葉の壁に直面する外国人介護人材に対して、継続的なサポートを行うことで、職場への定着率を高めることができます。ここでは、特に効果的な3つのフォローアップ方法について解説します。
4.1 メンター制度の活用方法
外国人介護人材の悩みを受け止め、成長をサポートするために「メンター制度」を導入するのが効果的です。 メンター制度とは、新しく入職した外国人介護人材に対して、先輩職員が指導役（メンター）となり、業務のサポートや相談相手として支援する仕組みです。
メンター制度のメリット
メリット | 内容 |
業務の理解を早める | OJTでは伝えきれない細かい業務の流れを学べる |
精神的なサポート | 文化や言葉の壁によるストレスを和らげる |
職場への定着率向上 | 孤立感を減らし、安心して働ける環境を作る |
メンター制度を成功させるポイント
メンターは外国人介護人材の気持ちを理解できる人を選ぶ
できれば外国人介護人材と同じ言語を話せるスタッフや、異文化理解がある職員が望ましい
定期的な面談を実施する
週1回、業務や生活の悩みを話せる時間を設ける
無理のない範囲でメンターの負担を軽減する
メンター自身の業務負担が増えすぎないように、チームでサポートする
外国人介護人材が「困ったときに相談できる人がいる」と感じられることで、安心して働き続けることができます。
4.2 相談しやすい環境づくり
職場に馴染めず悩みを抱えたままでは、外国人介護人材の定着は難しくなります。 そのため、日常的に相談しやすい環境を整えることが重要です。
相談しやすい環境を作るポイント
外国人介護人材専用の相談窓口を設ける
人事担当者や外国人支援スタッフが、悩みを聞く場を作る
言語サポートが可能な通訳スタッフや翻訳ツールを活用する
「何か困っていることはない？」と定期的に声をかける
日本では「自分から相談するのが当たり前」と思われがちだが、外国人介護人材は「上司に相談するのは失礼」と感じることもある
異文化交流の機会を作る
日本人スタッフと外国人介護人材がコミュニケーションを取れるイベントを開催する（食事会・レクリエーションなど）
お互いの文化を理解することで、信頼関係が築きやすくなる
「この職場なら安心して働ける」と感じてもらうことが、外国人介護人材の定着につながります。
4.3 研修・スキルアップ支援
外国人介護人材が長く働き続けるためには、成長の機会を提供し、スキルアップを支援することが重要です。 単に「働いてもらう」だけでなく、キャリア形成を考えたサポートを行うことで、モチベーションが向上し、職場への定着率も上がります。
研修・スキルアップの方法
研修内容 | 具体例 |
介護技術の向上 | 移乗介助・食事介助・排泄介助の実践研修 |
日本語研修 | 介護現場で使う日本語を学ぶ研修 |
資格取得支援 | 介護福祉士実務者研修の受講補助 |
スキルアップ支援の具体的な施策
日本語能力向上のサポート
介護現場で使う日本語の勉強会を定期的に開催
日本語能力試験（JLPT）や介護福祉士国家試験の受験サポート
キャリアアップの道を示す
「介護職員 → 介護福祉士 → 施設リーダー」といったキャリアパスを明確にする
スキルアップすることで給与が上がる仕組みを整える
研修の内容を外国人向けに工夫する
難しい日本語を使わず、やさしい言葉で説明する
映像や実技を交えながら、視覚的に理解しやすい研修を実施
「ここで働けば成長できる」と感じてもらうことで、長期的な定着につながります。
外国人介護人材の定着を促すためには、「メンター制度」「相談しやすい環境」「研修・スキルアップ支援」 の3つのフォローアップが重要です。
▶︎5. まとめ：外国人介護人材が活躍できる環境を整えよう
日本の介護業界では人手不足が深刻化しており、外国人介護人材の受け入れがますます重要になっています。しかし、ただ採用するだけではなく、適切な指導とフォローアップを行い、働きやすい環境を整えることが、定着と活躍につながります。
これまでの内容を振り返りながら、外国人介護人材を支援するポイントを整理しましょう。
外国人介護人材の指導と定着支援のポイント
1. 効果的な指導方法
日本の介護現場の特徴を理解してもらう
「自立支援」「尊厳を守るケア」「チームケア」など、日本独自の介護理念を伝える
言葉の壁を乗り越える工夫をする
やさしい日本語を使う、ジェスチャーやイラストを活用する、翻訳ツールを取り入れる
文化・価値観の違いを踏まえて指導する
異なる介護文化を尊重しながら、日本のルールを少しずつ学んでもらう
2. 実践的な指導の工夫
OJTとOFF-JTを組み合わせる
現場での実践（OJT）と座学研修（OFF-JT）をバランスよく取り入れる
わかりやすいマニュアルを作成する
簡単な日本語、図や写真を多用し、手順を明確にする
コミュニケーションを大切にし、モチベーションを維持する
日常的に声をかけ、成果を認め、キャリアアップの機会を提供する
3. 定着を促すフォローアップ
メンター制度を導入し、相談相手を作る
先輩職員が指導役となり、業務や生活の悩みをサポート
相談しやすい環境を整える
定期的に面談を行い、外国人介護人材専用の相談窓口を設置する
スキルアップの機会を提供する
日本語研修や資格取得支援を行い、キャリアアップの道を示す
外国人介護人材が活躍するために
外国人介護人材が安心して働き続けるためには、受け入れる企業側の理解とサポートが不可欠です。 文化や言語の違いを考慮した丁寧な指導を行い、長く働ける環境を整えることで、介護現場の貴重な戦力として活躍してもらえます。
「採用したら終わり」ではなく、「育てて活躍してもらう」ことを意識し、企業全体で支援体制を整えていきましょう。
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